「意思のあるPCI」を伝える、高岡みなみハートセンターの後進育成とは?

TCROSS NEWSのグループ登録を導入された高岡みなみハートセンター みなみの杜病院。今回、同院の理事長である平瀬裕章氏に循環器内科医の人材育成についてお話しいただき、その中でTCROSS NEWSがどのような役割を果たしているのか伺った。

高岡みなみハートセンター みなみの杜病院は、2019年に改称されてから5年経過しましたが、その間の変化について教えてください。

院内体制について

医師は、当初、山本隆介、太田宗徳、私の3名で立ち上げました。翌年の2019年からは、高岡市民病院時代の教え子でもある松井崇生、2022年からは栗田康寿が加わり、循環器5人体制となりました。病床数は変わらず95床、うち一般病床53床、看護体制(一般病棟入院基本料)は、10対1を取得しています。カテ室関連では、DCAに加え、ローターブレーター、ダイヤモンドバッグ、ショックウェーブ、そして2024年6月からはエキシマレーザーを導入し、最新の治療ができる体制を整えました。種々の病態への対応力が強化されたものと考えています。

診療実績について

2023年は、PCI 405例、下肢末梢動脈に対するEVT 81例、シャント不全に対するVAIVT 267例、カテーテル焼灼術74例を実施しました。2022年には栗田が6ヶ月間岐阜ハートセンターのご厚意により国内留学させていただき、心房細動に対するカテーテル焼灼術の研修を受け、2022年12月からは単独での施術が可能になり症例数は増加傾向を示しています。

平瀬先生が後進の指導の際に心掛けていることについて教えて下さい。

私は、かねてから後進の育成を人生最後の目標と考えてきました。私がカテ室で心がけていることは、「常にエレガントに立つ」ことです。手技が長くなってGW操作が荒くなっていないか、言葉遣いが高圧的になっていないか、合併症に直面したとき、恐れおののいていないか、前のめりになっていないかなどが自分のチェックポイントです。

皆さま、PCIをしている自分の後ろ姿を意識したことはありますか?サードの医師、メディカルスタッフ、いろいろな人が後ろ姿を見ています。私もこの目標に達したとは思っていませんが、後輩たちにも「常にエレガントに立つ」を実践してもらいたいと考えています。技術は、日々の臨床において、見て、観察して継承してくれる、いや、すでに継承しているとも思います。あとはいろいろな意味で「エレガント」であってほしいと願っています。

循環器内科医として後進に期待することについて教えて下さい。

一流のPCI術者になるために大切なことは、技術を超えたところにあると考えています。まずは、プライオリティを意識することです。目の前の患者さんにとって今一番優先すべきことを考えて対処を行うこと、そして、それが周囲にも明確に伝わっていることが重要だと思います。「意思のあるPCI」を行う術者になってもらうことを期待しています。

また、柔軟力を養うことも重要であると考えます。問題の解決のために1つ前に立ち返ることはできても、2つ前まで立ち返ることはなかなかできません。特に問題が生じたときに、俯瞰的な視点から捉えることができるよう心がけていただくことを期待しています。それにはまず、自分を静かなところにおく、冷静を保つことが大切です。

高岡みなみハートセンターが目指す今後の目標について教えて下さい。

これまでも、これからも、「一定の治療水準をすべての患者さんに提供すること」です。術者が変わると治療水準が変わるということはもっとも良くないことだと思っています。横のつながりをしっかりとし、患者さんの情報を共有しながらチーム一丸となって治療にあたることが目標です。

また、現在の病院は30年余りが経過しており、設計的にも旧基準対応の建屋です。院内には他にスペースもありませんので、カテ室も1カテをフル稼働していますが、急患受け入れ時の安全性の面からも2カテを設けることを目指します。そのためには新病院への建て替えが必要と考えています。

TCROSS NEWSのグループ登録プランを導入されていますが、施設として承認された理由と活用方法について教えてください。

かねてからテクロス社の情報収集力には敬服しておりました。時代の流れに即した文献紹介やコンテンツ、海外、国内学会での最新トピックスなどを紹介してくれています。また、豊橋ライブをはじめとする国内有数のライブ配信を視聴できることや、ライブで見逃したコンテンツを視聴できることなどが導入理由です。すべての文献を網羅することは不可能ですから、TCROSS NEWSさえチェックしていれば安心です。

今後、TCROSS NEWSに期待することを教えてください。

虚血の循環器領域は、診療材料費の削減などで、現場のみならず、メーカーの弱体化を招いています。これが虚血業界全体のシュリンクに繋がっていくのではないかと危惧しております。PCIが担ってきた医療は間違いなく、これからも必要な医療であります。私たち一個人が、医療行政に口出すことなどはできるわけもありませんが、TCROSSがゲートキーパーとなり、大きな声にして業界を再度、盛り上げていきたいと心より思っています。