
日本赤十字社和歌山医療センターの現在の診療体制について教えてください。
日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科では、現在15名のスタッフで診療に当たっています。PCIは年間約500例、EVTが約200例、アブレーションが約200例と、地方の病院としては充実した症例が経験でき、リードレスペースメーカーも多数施行しています。また、TAVI、Mitraclip、左心耳閉鎖といったSHDインターベンションや、胸部・腹部大動脈ステントグラフト IVRなど、多彩な手技に各スタッフが積極的に取り組んでくれています。
先生は大学でも勤務されていましたが、大学と日本赤十字社和歌山医療センターの臨床現場の違いはどのような点でしょうか。働き方なども含めてご教示ください。
以前勤務していた京大病院も非常に臨床のアクティビティが高く、若い先生方が早い段階からたくさんの手技を経験できる病院でした。また、多彩な手技を経験できる強みがありました。
一方、現在の日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科でも、多彩な手技を経験しながら、多数の緊急症例を経験できるメリットがあります。とくに緊急入院や緊急カテーテル手技については、周囲のスタッフも非常に協力的で、医師のストレスは少なくなっています。また、大学勤務と違って平日の外勤がないので、それぞれのスタッフは自身の予定を調整して他施設の見学に行ったり、有給休暇がとれるようになっており、超過勤務の管理もしっかりしています。
日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科ではどのようなカテーテルインターベンションのトレーニングプログラムを組まれているか教えください。

当院では、後期研修1年目(卒後3年目)から積極的にカテーテル手技に参加してもらい、まずはCAGの術者ができ、PCI/EVTの助手ができることを目標にしています。
後期研修1年目(卒後3年目)の後半から徐々にPCIやEVTのオペレーターを経験いただき、後期研修3年目(卒後5年目)になるころにはスタッフの監督下にACS-PCIの1stオペレーターができることを目標にしています。
卒後4-7年目くらいの時期にPCIフェローコースにも参加し、インターベンション関連の知識も整理してもらっています。
また、院内でのRotaのハンズオンやPCPS挿入ハンズオン、外部から指導医を招聘してのワークショップを開催したり、院外のPCI/EVTのワークショップに積極的に参加してもらうなど、若い先生方の勉強の機会を増やしています。
そして、卒後6年目に内科専門医とCVIT認定医を取得していただき、その後、SHDやステントグラフトなど、各自が興味のあるフィールドで若い先生方が活躍しています。
若手循環器内科医を育成する上で心がけていることなどあれば教えてください。
若い先生方に実技と知識をバランス良く身につけていただけるよう、ショートカンファレンスを毎日行い、インターベンションのストラテジーや緊急入院患者さんの治療方針を科内で共有しています。
また、AHAやESC、TCTなどで発表された新たなガイドラインやHot Topicなどを若い先生方に共有しています。
手技的な指導としては、まず助手として見学しながら手技の流れやストラテジーの考え方を勉強していただきますが、ある程度知識と手技が身についてくれば、基本的に若い先生方に積極的にオペレーターをしていただき、手技的につまずくまではアドバイスのみの指導にとどめています。どうしても手技がうまくいかない場合や手技自体がハイリスクの場合には手技を代わることがありますが、重要な場面が過ぎれば、再度若手の医師にオペレーターに復帰していただき、自身で最後までやり遂げる経験を多数積んでいただきます。
病変形態が同じでも、背景となる患者さんの年齢や併存症、目的とする治療のゴールによって、手技の内容は変わってきます。全体の手技の流れやリスクを考えながら、それぞれの患者さんに最適なストラテジーを立てられるように手技後に若い先生方とディスカッションすることも多いです。
同施設にて若手医師が研修を受ける魅力とは何でしょうか。

当院では同世代の若い先生方が多数研鑽しています。お互いの進達度を見ながら、協力し切磋琢磨できるところが魅力です。
また多数の緊急症例や複雑かつ重症な症例を経験できるため、循環器内科医としての基礎的な脚力を身につけることができます。
一方で、スタッフの医師も一緒に診療にあたりながら若手医師を指導できる体制が確立されているため、困ったらすぐに相談できることも大事だと思います。
TCROSS NEWSのグループ登録プランを導入されていますが、採用された理由と施設での活用方法について教えてください。
当院でも定期的な抄読会を開催していますが、緊急症例があったり、当直明けで帰宅する医師がいたり、開催が不定期となっています。また、全員で各分野の最新のトピックを網羅するのは難しくなっています。
TCROSS NEWSを購読することで、国際学会や国内学会での発表をフォローし、自施設での診療の質を上げ、また今後の臨床研究のテーマを考える上での重要な情報が手に入ると考えました。
今後、TCROSS NEWSに期待することを教えてください。
現代の循環器内科医師には、インターベンション、心不全や不整脈、補助循環や肺高血圧症の管理など、循環器疾患全般の知識のみならず、糖尿病や脂質異常といった生活習慣病の管理、医療安全、医学統計など、非常に多様な情報の取得、整理が求められます。
TCROSS NEWSから最新のデータや動向に関する情報を発信いただき、我々が効率的に情報を取得、整理することで、チーム全体の診療を高いレベルに維持することが重要であると考えています。