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新たな高コレステロール血症治療薬ベムペド酸を学ぶ ~作用機序、エビデンス、臨床的意義~

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高コレステロール血症治療薬である「ネクセトール錠180mg(一般名: ベムペド酸)」が、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症を効能・効果として11月21日に発売された。

本剤は、スタチンによる治療が適さない場合を除きスタチンと併用することとされ、通常、成人には180mgを1日1回経口投与する。

TCROSS NEWSでは、本剤の作用機序やエビデンス、今後の位置付けについて、大塚製薬社に伺った。

新たな作用機序による脂質低下

本剤は、肝臓に発現するACSVL1(極長鎖アシルコエンザイムAシンテターゼ)によって活性化し、ATPクエン酸リアーゼ(ACL)を阻害するプロドラッグである。スタチンはHMG-CoA還元酵素を阻害するが、本剤はコレステロール合成経路のより上流にあるACLを阻害し、スタチンと同様に肝臓でのコレステロール合成を減少させ、LDL-Cの低下作用を示す。

基礎研究データからは、骨格筋の中にはACSVL1はほぼ存在しないことが確認されている。

国内外の臨床エビデンス

CLEAR Outcomes試験1)では、32ヶ国の1,250施設より登録した、心血管リスクの高いスタチン不耐患者13,970人をベムペド酸180mg/日、又はプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。

ベースラインから6ヶ月のLDL-C値の平均変化は、プラセボ群が0.6%の低下、ベムペド酸群が21.7%の低下、hsCRP値の平均変化は、プラセボ群が2.4%の増加、ベムペド酸群が22.2%の低下を示した。

また、中央値40.6ヶ月の追跡で、ベムペド酸群は心血管死、非致死性MI、非致死性脳卒中、冠血行再建の複合リスクが有意に低かった。

国内のフェーズ3試験であるCLEAR-J試験2)では、日本の多施設より登録したスタチンへの反応が不十分/スタチン不耐の高LDL-C血症患者96人を、12週にわたりベムペド酸180mg/日、又はプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。

ベースラインから12週のLDL-Cの変化率は、ベムペド酸群では-25.25%を示し、プラセボ群との差は-21.78%であった(p<0.001)。スタチンへの反応が不十分な患者、スタチン不耐患者、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者におけるベムペド酸の効果は一貫していた。

また、hsCRP値も12週でプラセボ群では14.8%上昇したのに対し、ベムペド酸群では21.0%低下し(差-26.6%、p=0.014)、ベムペド酸群はプラセボ群と比較して、非HDL-C、総コレステロール、アポリポ蛋白Bのいずれも有意に低下させた(全てp<0.001)。

筋症状の有害事象の発現率は、両群で同程度であった。

脂質低下療法におけるネクセトールの位置付け

今日、脂質低下療法を受けている患者の中には、スタチン、エゼチミブを使用しても目標値が未達成の患者、また、注射剤が薬価や侵襲性の面から使用が難しい患者が存在する。

本剤は、スタチン、エゼチミブの投与を受けているものの目標値未達成の患者、また、スタチンへの反応が不十分な患者、スタチン不耐の患者に対する、肝臓を作用部位とする薬剤という選択肢を提供する。

2025年12月10日に開催されたプレスセミナーにおいても、東京科学大学の吉田雅幸氏より、心血管疾患高リスク患者の33%がスタチン、又はエゼチミブの服薬を処方後100日未満で中止しており、スタチン不耐疑いが約10%含まれたことが日本医療データセンターのデータより報告されていることから3)、ベムペド酸は新たな選択肢として期待されることが述べられた。

同社は、「本邦においてLDL-C目標値未達成の患者さんは多く、二次予防では約7割が未達成ということが分かっています。このような患者さんに新たな治療選択肢としてネクセトールを届けることで、未達成率の改善につながり、その後の心血管イベントを起こさない日々を送ることにも寄与できると考えています」と伝えてくれた。

(2025年12月取材)

  1. Nissen SE, et al. N Engl J Med. 2023; 388: 1353-1364
  2. Yamashita S, et al. Circ J. 2025; 8: 1256-1265
  3. Nagar SP, et al. Circ J. 2018; 82: 1008-1016
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