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実践に活かせる!IVUS所見の「考え方」 ~プラーク性状~

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連載企画として、血管内超音波(IVUS)画像の判読における実践的内容を、近畿大学奈良病院の川村克年氏より解説いただきます。

今回は、IVUSのプラーク性状所見の考え方についてレクチャーいただきました。

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はじめに

前回は、IVUSの所見を「見つける」ためのトレーニング方法について述べた。IVUSの判読では、所見をまず「見つけ」、次にそれが何であるかを「考える」という2つのステップが必要である。今回は、第2のステップである「考える」について述べる。テーマは「プラーク性状」である。

血管内超音波におけるプラーク性状の表現

はじめに確認しておきたいのは、「超音波画像は組織学と根本的に異なるため、グレースケールIVUSでは組織学的内容を特定して定量化することはできない」という点である。グレースケールIVUSには、CTにおけるCT値のような一定の数値指標は存在しない。

しばしば耳にする表現として「黒っぽいプラークは脂質性」、「白っぽいプラークは石灰化」、「その中間が線維性」がある。

では、【図A】の点線部のプラークは「白っぽい」ので石灰化と言えるのか?

【図B】は輝度を上げた画像であるが、同部位は「白」ではなく、むしろ「白と黒の中間」に見える。このように画質調整によって見え方は変わり得るため、白/黒のみでの判別は不明確である。

では、どのように表現するか、答えは「外膜エコー輝度との比較」である。IVUSでは外膜と周囲組織との境界が明瞭ではないため、外弾性板(EEM)の外側を外膜と一致すると定義し、EEM外側の輝度とプラークの輝度を比較して性状を表現する。

これに準じて【図A】、【図B】を見ると、画質調整にかかわらず、対象プラークの輝度は外膜エコー輝度と同程度であることが分かる。

超音波画像の生成機序

送信された超音波は物質に当たって反射し、受信された反射波の到達時間に応じて奥行きとして表示される。音響インピーダンス(平易に言えば組織性状)の異なる境界で反射が起こるため、性状の異なる組織が層状に画像化される。反射強度が強いほど明るく(白く)、弱いほど暗く(黒く)表示される。

プラーク性状

  • 低輝度プラーク
    外膜の輝度よりも輝度の低いプラークは、主に脂質成分を多く含む。内部に梁状の複雑な構造を呈する場合、細かな構造内で反射回数が増え超音波エネルギーが減衰するため、後方の信号が低下するエコー減衰を伴いやすい。
  • 等輝度/高輝度プラーク
    外膜と同等の輝度を示すプラークは線維性プラークと呼ばれる。線維組織の含有量が多い高密度線維性プラークではエコー輝度が上がり、高輝度プラークとして表示される。
  • 石灰化プラーク
    石灰化は強い反射を生じるため、表面が明瞭な高輝度(白)として描出され、超音波は通過せず反射される。その結果、石灰化表面の後方は画像化されず黒抜けし、音響陰影(Acoustic shadow)を呈する。白く見えても音響陰影を伴わない場合は石灰化ではなく、高密度線維性プラークと表現されることが多い。

    また、石灰化プラークでは、トランスデューサから出た超音波が石灰化とカテーテルの間で一定時間内に複数回反射して像として表示される多重反射像を認めることがある。これはデバルキングデバイスで石灰化を切削した後に目立ちやすい。さらに、内腔へ突出する石灰化像(石灰化結節)が見られることがあり、血管内内視鏡では金平糖様の凹凸を呈して内腔へ張り出す所見として観察される。

IVUSで石灰化プラークの後方は本当に観察できないのか?

IVUSで石灰化を観察していると、石灰化後方に何らかの像が見え、「それが中膜なのではないか」、また「石灰化の厚みにより見え方が変わるのではないか」、あるいは「多重反射が起こる場合と起こらない場合の違いは何か」と、疑問を抱くことがある。筆者も十数年前に同様の疑問を持った。

そこで、IVUSと光干渉断層法(OCT)を同一血管で施行する機会があったため、同一部位の方向と拡大率を合わせて比較した。

OCTでは石灰化後方が観察できるため、その輪郭をトレースし、IVUS画像に当てはめたところ、IVUSで血管構造と考えられる部分とは一致せず、厚みが反映されることもなかった。また、多重反射像が見られた部位では、石灰化表面が滑らかで内腔側にプラークを認めなかった。

これは、滑らかな石灰化表面で超音波が直接的に反射し、一定時間内に複数回反射するためと考えられる。すなわち、表面が滑らかで内腔に接する石灰化は多重反射を起こしやすい。

以上の比較から、超音波画像では石灰化の後方は観察できないこと、多重反射像は滑らかな表面で内腔に接する石灰化プラークに由来することが示唆された。

まとめ

  • グレースケールIVUSは組織学そのものを特定・定量化できない。CT値のような固定指標はなく、外膜(EEM外側)エコー輝度との相対比較でプラーク性状を表現する。
  • 超音波画像は異なる組織境界での反射を輝度として描く。反射が強いほど白、弱いほど黒。
  • 低輝度プラーク: 外膜より暗い。脂質成分が多く、内部構造によりエネルギー減衰が生じると後方信号低下(エコー減衰)を伴いやすい。
  • 等輝度/高輝度プラーク: 外膜と同等=線維性。線維成分が多い高密度線維性は高輝度として見える。
  • 石灰化プラーク: 表面は強反射で白、後方は音響陰影で黒抜け。白いが陰影なしは高密度線維性のことが多い。滑らかで内腔に接する石灰化は多重反射像を生じやすい。
  • OCT対比からの示唆: IVUSでは石灰化後方構造は描出できず、見えているように思える像は一致しない。多重反射像は滑らかな内腔接在の石灰化に由来する所見と解釈できる。
実践的ポイント
  • - 色味(白っぽい/黒っぽい)だけで判断せず、外膜輝度との相対比較で性状を表現する。
  • - 低輝度+減衰は脂質性を示唆、高輝度+陰影は石灰化、白いが陰影なしは高密度線維性をまず考える。
  • - 石灰化後方の“構造らしき像”に惑わされない。IVUS単独では後方は見えないのが前提。
  • - 滑らかな石灰化面に接した内腔側の多重反射はデバルキング後に目立ちやすい。

最後に

本稿で扱ったのは頻度の高いプラークであるが、冒頭で述べたようにグレースケールIVUSでは性状の定量化はできない。あくまで定義に基づく相対評価として臨床画像に向き合うことが重要である。その積み重ねが、IVUS studyを通じてより良い治療結果につながると考える。

 

 

参考文献

  1. Saito Y, et al. Cardiovasc Interv Ther. 2025; 40: 211-225

(2025年9月)

川村 克年 氏

ご略歴

2005年
京都医療技術短期大学 診療放射線技術学科 卒業
滋賀医科大学医学部附属病院 放射線部
2006年7月
特定医療法人渡辺医学会 桜橋渡辺病院 放射線科
2019年4月
特定医療法人渡辺医学会 桜橋渡辺病院 放射線科 主任
2023年4月
近畿大学奈良病院 放射線部

資格

2005年4月
診療放射線技師 免許
2017年7月
日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師 認定
2021年5月
厚生労働省指定 告示研修 修了
2024年8月
Medis QFR Certificate 取得
受賞歴
CCT 2012:
CTOに対する順行性IVUSガイドアプローチにおいてViewITが有用であった一例
KCJL 2015:
慢性完全閉塞性病変に対する3D-wiringと2D-wiringの比較検討
KCJL 2016:
心房細動アブレーションにおける線量低減モードの作成
KCJL 2017:
ACIST社製HDi-IVUSを用いた高速プルバック時の計測値の検討
CVIT 2019:
IVUS guide 3D wiring Tip Detection法におけるGuide wire回転方向の3次元的評価の検討
論文
  • ルアーロック型1mLシリンジを用いたIVUSプライミング方法の気泡除去の経験: 日本心血管インターベンション治療学会誌 7(3), 90-93, 2015
  • Terumo社製Navifocus WRとTerumo社製VISIWAVEのC モード(35MHz)が、慢性完全閉塞性病変入口部の側枝からの観察に有用であった1例: 日本心血管インターベンション治療学会誌 8(1), 35-39, 2016
  • 冠動脈造影から推側されるX線ディテクターの直交回転方向の検討: 日本心血管インターベンション治療学会誌 9(1), 54-61, 2017
所属学会
  • 日本循環器学会
  • 日本心血管インターベンション治療学会
  • 日本心血管インターベンション治療学会近畿地方会 放射線部門長
  • 日本放射線技術学会
  • 日本放射線技術学会 近畿支部
  • 日本診療放射線技師会
  • 奈良県診療放射線技師会
所属研究会
  • 関西IVR撮影技術研究会 幹事
  • 日本心臓血管3次元モデル研究会 世話人
  • 大阪血管内イメージングカンファレンス 代表世話人
  • YES Club Medical Staff Academy 理事
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