血管内超音波(IVUS)画像の判読における実践的内容を、近畿大学奈良病院の川村克年氏より解説いただく連載企画です。
今回は、IVUSセットアップ、Automatic pullback、IVUSマーキング、術後のIVUS評価の各過程において、注意するべきポイントについて解説いただきました。
血管内超音波(IVUS)画像の判読における実践的内容を、近畿大学奈良病院の川村克年氏より解説いただく連載企画です。
今回は、IVUSセットアップ、Automatic pullback、IVUSマーキング、術後のIVUS評価の各過程において、注意するべきポイントについて解説いただきました。
PCIにおいてIVUSは、血管内を観察するための画像診断ツールであると同時に、病変評価、ステントサイズの選択、ステント留置位置の決定、治療結果の評価を支援するサポートツールである1)。
IVUSを使用する上でまず意識してほしいのは、「きれいな画像を得ること」だけが目的ではないという点である。IVUSから得られた情報を、治療選択、結果の評価にどうつなげるか。そこまで含めて初めて、IVUSガイドPCIと言える。
実際のカテ室では、IVUS画像そのものよりも、そこから得られた情報をどのタイミングで手技に反映するかが重要である。今回はIVUS手技の一連の流れを、
の4つに分け、現場で意識すべきポイントを中心に解説する。
カテ室でIVUSを使用していると、画像そのものは問題なく得ることができているにもかかわらず、その情報が十分に手技へ反映されていない場面がある。
たとえば、Pre-procedural IVUS(以下、Pre IVUS)でReference segmentや病変範囲を確認しているのに、それらが冠動脈造影画像上のどこに相当するのかが曖昧なまま、バルーン拡張やステント留置に進んでしまうことがある。IVUSで適切な位置を判断しても、その位置を冠動脈造影画像上に明確に対応づけられなければ、得られた情報を手技に十分活かすことはできない。
また、Post-procedural IVUS(以下、Post IVUS)において、ステント内だけを見て安心してしまうこともある。ステントの拡張が良好に見えると、そこで確認を終えたくなるが、実際にはステントエッジの解離、ストラットの圧着不良、Geographic miss、入口部のガイドカテーテルによる損傷など、見落としてはならないポイントがある。
IVUSで大切なのは、画像を撮ること自体ではない。その画像から得られた情報を、治療方針や次の操作にどう反映するかである。

IVUS手技の最初のポイントはセットアップである。ここで特に意識すべきなのは、プライミング時にシリンジで強く圧をかけないということである。
プライミングというと、「しっかりヘパリン加生理食塩水を流す」「勢いよく押し出す」というイメージを持つかもしれない。しかし、筆者らの経験では、IVUSカテーテル内に強い圧をかけることで、カテーテル内の微小気泡が顕在化することがある。
筆者らは以前、ルアーロック型1mLシリンジを用いたIVUSプライミング方法について報告した2)。プライミングの要点は、「シリンジ内の微小気泡を除去すること」「接続部の空気を抜くこと」「シリンジで強く圧をかけないこと」の3点である。

ここで重要なのは、「気泡を押し出す」ことではなく、気泡を残さず、かつ顕在化させない状態でカテーテル内を満たすことである。
IVUSカテーテル内に気泡が残ったまま冠動脈内へ挿入すると、画像不良の原因になるだけでなく、冠動脈内へ空気を持ち込むリスクにもつながる。そのため、プライミングは画像をきれいにするためだけではなく、安全に冠動脈内へ挿入するための準備作業である。
臨床では手技の進行状況によって、IVUSカテーテルの準備に十分な時間を確保できない場面がある。しかし、血管内に入ってから画像不良や気泡の残存が判明すると、カテーテルを一度体外へ戻して、再度フラッシュを行わなければならないことがある。その結果、手技が中断され、かえって時間を要する。
したがって、冠動脈内へ挿入する前に、シリンジ内、接続部、カテーテル内の気泡を十分に確認することが、手技を円滑に進め、IVUSを適切に使用するために重要である。
近年、IVUSのAutomatic pullbackは高速化しており、短時間で広範囲を観察できるようになっている。しかし、プルバック速度は常に速ければよいわけではなく、症例の状態と観察目的に応じて使い分ける必要がある。
以下に示す速度設定は、筆者が実臨床で行っている使い分けの一例である。使用可能な速度はIVUSシステムやカテーテルによって異なるため、使用する機器の仕様を事前に確認する必要がある。
| 状況 | 主な目的 | 速度の目安 |
|---|---|---|
| IVUS挿入によりST上昇を認める症例 | 虚血時間を短縮する | 8.0-9.0mm/s |
| 通常の病変評価 | 観察時間と情報量のバランスを取る | 3.0mm/s |
| LMT周囲・RCA入口部 | 限局した範囲を詳細に観察する | 0.5-1.0mm/s |
※すべてのIVUSシステムに共通する推奨速度ではない。
たとえば、IVUSカテーテルの挿入によってST上昇を認める症例では、カテーテルによって冠血流が一時的に妨げられている可能性がある。このような場合には、詳細な観察よりも虚血時間を短くすることを優先し、使用可能な範囲で最速のプルバックを選択する。
一方、通常の病変評価では、3.0mm/s程度を用いることが多い。プルバックが速すぎると、プルバック中に各断面を十分に確認することが難しくなり、観察したい部位が短時間で通過するため、詳細な評価が困難になることがある。
さらに、LMT周囲やRCA入口部など限られた範囲を詳細に確認したい場合には、低速プルバックが有用である。これらの部位では、ガイドカテーテルによる入口部損傷など、見落としてはならない所見が存在する。広範囲を速く撮るよりも、必要な部位をゆっくり確実に観察することが重要である。
IVUSから得られた情報は、画像の中だけで完結させてはならない。PCIでは、IVUSで確認したReference segment、病変範囲、Landing zoneが、冠動脈造影画像上のどこに相当するのかを明確にする必要がある。
そのために重要なのがIVUSマーキングである。

IVUSマーキングを行うことで、IVUS所見を冠動脈造影画像上に対応させることができ、バルーン拡張部位やステント留置位置の決定を支援できる。Angio-IVUS co-registrationについても、IVUS断面を冠動脈造影画像上の位置に対応させる技術的実行可能性が報告されている3)。
特に、びまん性病変、分岐部近傍、入口部病変では、「このあたり」という感覚的な位置決めでは誤差が生じやすい。
現場で重要なのは、マーキング後に寝台を動かさないことである。
X線画像は3次元構造を2次元に投影した画像である。そのため、マーキング後に寝台を移動すると、X線管、検出器、患者、血管の幾何学的位置関係が変化し、マーキング画像と実際の透視画像との間にずれが生じて、位置情報としての信頼性が低下する。
IVUSマーキングは、単に印をつける作業ではない。IVUSから得られた情報を、実際のPCI操作へ変換するための翻訳作業である。
ステント留置後のIVUSでは、ステントが十分に拡張しているかを確認するだけでは不十分である。予定した位置にステントが留置されているか、ストラットが血管壁に圧着しているか、ステントエッジや周囲の血管に合併症が生じていないかまで確認する必要がある。
Post IVUSでは、以下の順に確認すると、評価項目を整理しやすい。
SCAIの実践的解説でも、Post-intervention assessmentとして、ステントのサイズ、Apposition、拡張、Geographic missといった留置状態の評価に加え、解離、血栓、壁内血腫、組織のプロトルージョンなどの急性合併症、MSA、側枝入口部、Longitudinal stent deformationの確認が挙げられている1)。
ステント留置位置の評価では、Post IVUSだけを見ても、予定した位置に留置できているかを判断しにくいことがある。
そのため、Pre IVUSの時点で、側枝などの解剖学的ランドマークから予定するステントエッジまでの距離を測定しておくことが重要である。たとえば、「側枝からDistal edgeまで何mm」「側枝からProximal edgeまで何mm」と記録しておけば、Post IVUSでの比較が容易となる。
特に、びまん性病変や分岐部近傍では、冠動脈造影画像上の見た目だけでなく、IVUSで測定した長軸方向の距離を併用することで、予定した病変範囲をステントでカバーできているかを確認しやすくなる。
ステント拡張の評価では、ステント内で最も内腔面積が小さい断面のMinimum stent area(MSA)を測定する。
SCAIの解説では、ステント拡張の実践的な目安として、MSAを遠位Reference lumen cross-sectional areaの≧80%、理想的には>90%とすること、または絶対値として非LMT病変では>5-5.5mm2、LMT病変では>8mm2とすることが示されている1)。
一方、IVUS-XPL試験では、植込みステント長≧28mmの長病変を対象とし、IVUS群におけるOptimal stent expansionを、MSAが遠位Reference lumen areaを上回ることと定義していた4)。
同試験では、IVUSガイドPCIは血管造影ガイドPCIと比較して、主要心血管イベントを1年時点で2.9%対5.8%に低減した。5年追跡においてもそれぞれ5.6%と10.7%であり、IVUSガイドPCIの臨床的有用性が持続していた4、5)。
ただし、この結果は、「MSAが遠位Reference lumen areaを上回れば、すべての症例で十分な拡張が得られている」ことを示すものではない。
IVUS-XPL試験とULTIMATE試験のデータを用いた統合解析では、検討された複数の拡張基準のうち、MSA>5.5mm2、MSA>5.0mm2、またはMSA/遠位Reference lumen area>90%を達成した症例で、3年間の心臓死、標的病変関連心筋梗塞、ステント血栓症の複合イベントが少なかった。
一方、MSA/遠位Reference lumen area>100%という基準は、同解析において、これらのハードエンドポイントの低下と有意な関連を示さなかった6)。
したがって、MSAは重要な指標であるが、単一の数値だけでステント留置結果の適否を判断すべきではない。血管径、病変部位、石灰化、血管のテーパー、LMTか非LMTか、分岐部を含むかどうかを考慮し、ステント全長の拡張状態と合わせて評価する必要がある。
MSAが目標値を満たしていても、そこで評価を終了してはならない。ステント全長を観察し、ストラットの圧着不良、ステントエッジの解離、壁内血腫、組織のプロトルージョン、血栓、Geographic missがないかを確認する必要がある。
SCAIの解説でも、ステント拡張だけでなく、Apposition、Geographic missおよび急性合併症をPost IVUSの主要な評価項目としている1)。
特に注意すべきなのは、ステント内腔が十分に拡張していると、それだけで良好な結果と判断してしまうことである。ステント内が良好であっても、エッジに解離が存在したり、予定したLanding zoneから外れ、病変を十分にカバーできていなかったりする可能性がある。
また、特に意識してほしいのが、RCA入口部およびLMT入口部の確認である。
手技中は治療した病変部に注意が集中するため、ガイドカテーテルが接触していた入口部の損傷は見落とされやすい。
そのため、Post IVUSではステント部分だけを観察して終了するのではなく、可能な範囲で冠動脈入口部まで戻り、解離や壁内血腫などの異常がないかを確認する必要がある。特に、手技中にガイドカテーテルの深い挿入、圧波形の鈍化、造影剤の逆流不良、入口部での抵抗などを認めた場合には、入口部を意識的に観察すべきである。
ULTIMATE試験では、IVUSガイドPCIにおける最適化基準として、以下の3項目が設定された。
そして、これらすべてを満たした場合をOptimal PCI、1項目でも満たさない場合をSuboptimal PCIと定義した7)。
IVUS群724例のうち、3項目すべてを達成したのは384例、53%であった。12ヶ月時点のTarget Vessel Failure(TVF)は、Optimal PCI群で1.6%、Suboptimal PCI群で4.4%であり、Optimal PCI群で有意に低かった(HR 0.349 [95%CI 0.135-0.898] p=0.029)7)。
ただし、この比較は、Optimal PCI群とSuboptimal PCI群に無作為に割り付けた解析ではなく、IVUS群内における基準達成の有無による比較である。そのため、基準を達成したこと自体がTVFを低下させたと断定するのではなく、IVUSによる最適化基準の達成が良好な臨床転帰と関連していたと解釈すべきである。
この結果は、IVUSを挿入して画像を取得するだけでは十分ではなく、得られた画像からステント拡張、ステントエッジのPlaque burden、エッジ解離を適切に評価し、その所見を追加拡張や治療方針に反映することが重要であることを示唆している。
つまり、IVUSガイドPCIの本質は、IVUSを「使用したか」ではなく、IVUS所見に基づいて治療結果をどこまで最適化できたかにある。
Post-procedural IVUS imagingは、単にステント拡張度を測定する工程ではない。予定した位置にステントが留置され、十分に拡張・圧着し、エッジ、側枝、入口部に見逃してはならない合併症がないことを確認する、PCIの最終的なOptimizationである。
まとめ: IVUSは「見る」ためでなく「迷わない」ために使う
IVUS手技では、セットアップ、Automatic pullback、IVUSマーキング、Post-procedural IVUS imagingのすべてに意味がある。
プライミングでは、画像品質と安全性を確保した状態で冠動脈内へ挿入する。Automatic pullbackでは、症例の状態と観察目的に応じて速度を選択する。IVUSマーキングでは、IVUS所見を冠動脈造影上の位置情報へ変換する。Post IVUSでは、ステント内だけでなく、ステントエッジ、側枝、冠動脈入口部まで確認する。
この一連の流れを意識することで、IVUSは単なる確認画像ではなく、PCIの判断を支えるサポートツールとなる。
読者には、IVUSを「読めるようになる」だけでなく、IVUSから得られた情報を用いて手技を組み立てられるようになってほしい。
この3点を常に意識することが、PCIの精度と安全性の向上につながる。
参考文献
(2026年8月)
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