心原性ショックを伴う症例における循環管理、及び全身管理は患者の命に直結するものの、ガイドラインには示されていないような重症症例もあり、症例報告からの知見が活かされることも多いのではないでしょうか。
「症例から学ぶ循環器集中治療管理」では、循環器疾患の急性期管理に焦点を当て、症例提示の形で各施設のハートチーム、集中治療チームがどのような考えで最適と考える治療プランに至ったのかを共有し、モデレーター、ディスカッサントとともに徹底的に議論を行った循環器集中治療フォーラムでご提示いただいた症例をご紹介いたします。今回は、さいたま市民医療センターの橋元由紀子氏より提示いただいた甲状腺クリーゼにより心原性ショックを呈し、集中治療管理が必要であった40代女性の症例です。
症例
40代 女性
主訴
発熱、不穏状態
現病歴
来院の半年前から発熱、倦怠感、間接痛、易疲労感を自覚していた。怒りっぽくなったが、更年期障害だと思い様子をみていた。食欲が低下、体重も減少した。皮膚の色調変化のため、皮膚科を受診したが経過観察となっていた。例年の夏よりも、暑がっていた。来院当日の深夜1時に痛みと熱さを訴えた。不穏状態で、体動困難であったため、家族より救急要請された。
既往歴
内服
なし
アレルギー
花粉症
身体所見
来院時バイタル
著明な頻脈、頻呼吸、発熱を認めた。
BP 140/66 mmHg、
HR 156/分、
RR 38回/分、
SPO2 98%(リザーバーマスク10L)、
BT 41.6℃、
GCS E4V2M6
身長165cm、
体重57.5kg、
BMI 21.5
【頭頚部】
両側眼球突出あり、
眼球結膜黄染あり、
甲状腺はびまん性腫大、
血管雑音聴取あり
【胸部】
呼吸音: 両下肺野で呼吸音低下
心音: 頻脈により心雑音聴取困難
現病歴、身体所見から、甲状腺機能亢進症、及び甲状腺クリーゼが疑われた。
心エコー
eyeball EF 60%、derate MR、sever TR
右室の著明な拡大により左室圧排所見あり。肺塞栓症も疑われ...